測定の原理(概要)
GISTAでは、リストバンド型センサで取得される脈波(脈のリズム)から、
心拍数と心拍のゆらぎ(心拍変動)を測定し、体の状態を総合的に分析しています。
これにより、日常生活の中でのコンディションやパフォーマンスの状態を、客観的に把握することが可能になります。
脈のリズムは一定ではなく、一拍ごとにわずかに変動しています。
この「ゆらぎ」は偶然ではなく、体のバランスを自動的に調整している自律神経の働きを反映したものです。
そのため、このゆらぎを分析することで、現在の体調やストレス状態、さらには集中状態を読み取ることができます。
自律神経には主に2つの働きがあります。
・活動や集中に関わる「交感神経」(仕事や運動、緊張時に活性化)
・休息や回復に関わる「副交感神経」(リラックスや睡眠時に活性化)
これらはバランスを取りながら働いており、その状態によって私たちのコンディションは常に変化しています。
GISTAでは自律神経活動を分析する際には、以下のような指標が用いられます。
・交感神経活動:体がどれだけ活動モードにあるかを示す指標で、アプリでは「アクティブ度」として表現されます。
・トータルパワー:自律神経全体の活動量を示す指標で、心身のエネルギー状態を反映するため、アプリでは「元気度」として表現されます。
GISTAは、こうした心拍数と心拍変動の情報をもとに自律神経の状態を読み取り、
独自のアルゴリズムによって解析を行い、現在の状態の集中度を分かりやすく可視化します。

アプリでは、集中度が高いときや低いときに、
通知によるアラート表示を行い、現在の状態をリアルタイムでお知らせします。
さらに、その状態に応じて、
・休憩を取る
・軽く体を動かす
・作業環境を整える
といった行動のアドバイスも表示されます。
これにより、自分では気づきにくいコンディションの変化を把握し、
より良いタイミングで行動を調整することが可能になります。
GISTAは、心拍数と心拍変動をもとに体の状態を分析し、
集中度を可視化するとともに、適切なアクションをサポートすることで、
日々の仕事や生活における生産性向上を支援するアプリです。
ぜひ、日常のコンディション管理やパフォーマンス向上にご活用ください。
より詳しく知りたい方へ(測定原理の科学的背景)
ここからは、GISTAの測定原理を支える生理学的・工学的な背景について、もう一歩踏み込んで解説します。
1. 自律神経とは
自律神経は、構造的・機能的にみて内部環境と外部環境の間を接続する位置にあり、身体の機能を調和させ、ホメオスタシス(心血管・呼吸調節、体温調節、胃腸運動、尿・便の排泄機能、生殖機能、代謝・内分泌機能)を保ち、ストレスに対する適応的反応(いわゆる「闘争か逃走か」反応)を司っています。自律神経系は、種の生存と増殖を確保するために、休むことなく働き続けているといえます[1]。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2種類に大別されます。交感神経が優位になると体はアクティブな状態となり、副交感神経が優位になると体はリラックスした状態になります。
体が最も良い状態で機能するのは、交感神経も副交感神経も両方が高いレベルで活動しているときです。アクティブな状態では交感神経がやや優位に、リラックスした状態では副交感神経がやや優位に、というシーソーのようなバランスが生じていますが、どちらか一方に大きく偏った状態は望ましくありません[1]。

2. 心拍変動による自律神経の測定
簡便かつ非侵襲で自律神経機能を評価する方法として、心拍変動解析(Heart Rate Variability:HRV)があります。リストバンド型センサにより心拍の揺らぎ(心拍間隔)を測定し、心拍変動解析によって交感神経活動および副交感神経活動を評価することができます。
具体的な処理は、次の3つのステップで行われます。
(1) RR間隔の測定
心拍波形において、ある拍と次の拍との間の時間をRR間隔と呼びます。心拍は一見規則的に見えても、RR間隔は毎拍わずかにズレており、このズレが自律神経活動による「ゆらぎ」です。たとえば、息を吸うときには心拍がやや速くなり(RR間隔が短くなり)、息を吐くときにはやや遅くなる(RR間隔が長くなる)といった変化が常に起こっています。このゆらぎが大きいほど、副交感神経機能が優位でリラックスしている状態を示します。

(2) RR間隔波形(時系列データ)の生成
測定したRR間隔を時間順に並べ、横軸に時間、縦軸にRR間隔の値(ミリ秒)をとった波形として表現します。これにより、心拍のゆらぎが時間とともにどのように変動しているかを連続的なデータとして扱うことができます。この波形の振幅の大きさが自律神経の活動量(パワー)に比例するため、ゆらぎの大小から自律神経の活発さを評価できます。

(3) 周波数解析による成分の分離
RR間隔の波形には、速いゆらぎ(短い周期で変動する成分)と遅いゆらぎ(長い周期で変動する成分)が混ざり合っています。これらを周波数解析[2]という手法で分離することにより、ゆらぎがどの周波数帯にどれだけのエネルギーを持っているかを表すスペクトルとして可視化できます(横軸:周波数 [Hz]、縦軸:スペクトル密度 [ms²])。
人の心拍ゆらぎをスペクトル解析すると、特定の周波数帯にピークが現れ、主に次の2つの成分に分けられます。
- 高周波成分(HF:0.15〜0.40 Hz):呼吸周期に伴う変動を反映し、副交感神経の活動を示す指標。
- 低周波成分(LF:0.05〜0.15 Hz):血圧変動を反映し、交感神経と副交感神経の双方の影響を受ける指標。
この2つの成分の大きさやバランスを見ることで、交感神経・副交感神経の活動状態をそれぞれ定量的に把握することが可能になります。

3. 主な解析指標
■ トータルパワー(TP = LF + HF)
LFとHFの和であり、自律神経の活動量を示す指標です[2]。疲労との相関が報告されており、値が小さいほど疲労が蓄積していることを示します[4]。心臓のポンプ活動は自律神経のトータルパワーによって調節されており、疲労や加齢によって低下することが研究で示されています。GISTAアプリの「元気度」はこの指標に対応します。
■ LF/HF(自律神経バランス)
交感神経活動をより純粋に反映する指標と言われており、値が大きいほど交感神経活動が亢進している、すなわち緊張・興奮・覚醒状態にあることを示します[3]。GISTAアプリの「アクティブ度」はこの考え方に基づいています。
4. 集中度の算出について
弊社は、芝浦工業大学、神戸大学、横浜市立大学医学部との共同研究により、心拍変動から集中状態を定量化する研究を行っています。交感神経活動が高い状態でも、良いストレス(=集中・覚醒)と悪いストレスに分離することで、集中状態を評価しています。
持続的注意集中検査、脳波、大量の心拍変動値[5-8]、および主観値のビッグデータに基づく学術研究の成果として、独自のアルゴリズムにより集中度を算出しています[9-10]。
【参考文献】
[1] David Robertson 原著、高橋昭・間野忠明 監訳『ロバートソン自律神経学』エルゼビア・ジャパン株式会社、2007.
[2] 日野幹雄『スペクトル解析(新装版)』朝倉書店、2010.
[3] Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing and Electrophysiology, “Heart rate variability: standards of measurement, physiological interpretation, and clinical use,” Circulation, 93, pp.1043-1065, 1996.
[4] 倉恒弘彦「自律神経異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成」厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(精神の障害/神経・筋疾患分野)平成21-23年度総合研究報告書、2011.
[5] Makoto Komazawa et al., “Evaluation of Heart Rate in Daily Life Based on 10 Million Samples Database,” Global Journal of Health Science, Vol.9, No.9, pp.105-115, July 2017.
[6] Makoto Komazawa et al., “Measurement and Evaluation of the Autonomic Nervous Function in Daily Life,” Health, Vol.8, No.10, pp.959-970, Jul 2016.
[7] Makoto Komazawa et al., “On Human Autonomic Nervous Activity Related to Weather Conditions Based on Big Data Measurement Via SmartPhone,” Health, Vol.8, No.9, pp.894-904, Jun 2016.
[8] Makoto Komazawa et al., “On Human Autonomic Nervous Activity Related to Behavior, Daily and Regional Changes Based on Big Data Measurement Via SmartPhone,” Health, Vol.8, No.9, pp.827-845, Jun 2016.
[9] 駒澤真人・板生研一・菅谷みどり「心拍変動を活用した集中状態の評価検討」電子情報通信学会MEとバイオサイバネティックス研究会、新潟、2019年5月.
[10] 駒澤真人・板生研一・畝田一司・羅志偉・板生研一「心拍変動と心拍数を組み合わせたストレス評価に関する検討」第28回人間情報学会、pp.3-4、東京、2017年12月.